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           メール・マガジン

      「FNサービス 問題解決おたすけマン」

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    ★第052号       ’00−07−14★

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     無用に用?

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●もちろん正しくは

 

「無用の用」。 役に立たないとされていたものが、大きな役に立つこともある、、

今は懐かしい<終身雇用制度>にも、そんな一面がありましたかな。  しかし、

 

こと人間に関して、「いつか役立つだろう」で余分を蓄えておく呑気さは、もう

どの企業にもありません。  言うなら「無用は無用!」、情け無用の時代。

 

たとえ今それなりに役立って(いる、と本人は思って)いても、ある日いきなり

サヨナラが来たりします。 ちゃんとやってたのに、、 なんて逆らっても無益。

じゃ、どうなら認めてくれるんですか?  そりゃキミ、独創力の発揮だよ!

 

 

モノの世界も同様、普通程度に役立つのではダメ。 特徴が無くちゃ売れない、

その工夫が簡単ではなくなっています。 ハード面はたいてい似たようなもの、

あとはデザインや売り方、即ちソフト面での競争、、 となると、何でもアリ。

 

その中で、マイッタ、そのテがあったか?! と思わせるようなものを生み出す

のが<普通>を超えたセンス、独創性。 しかしまさか、<役に立たない>こと

をウリにした<商品>が出現するとは思わなかった。 また、その<非実用的>

が、羽が生えたように売れてしまうとも。 我が不明と<化石>性を、つくづく

思い知らされました。  今まで無かったぜ、そんなの、、だから、<独創的>。

 

無用(としか見えないもの)に効用が見いだされる、、 フム、「無用に用」か。

そんな言い方、今まで無かったろう?  私における独創は、せめてそんな程度。

 

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●エンターテインメント・ロボット<AIBO>

 

が発表された時には、性能や使用目的、そして価格設定、、、首を傾げるばかり

でした。 それがあんなに売れるとは、ね! 堅実無比の名古屋人を父に持ち、

国家的物資欠乏時代に物心がついて大のムダ嫌いに出来上がった私には、、、

 

しかし私だけじゃなかった。 <AIBO>開発チームのリーダー、ソニー常務

土井利忠氏の話では「それが普通」。 やれやれ、、 「開発に着手した7年前、

アイボのヒットを予見した人は希。 50歳以上では皆無」だったそうですから。

         ( 5/30 NHKTV3 ETV2000「独創はこうして生まれた(2)」

 

 

そのアイデアの背景が<生活の豊かさ>なら、その点、我々と段違いのアメリカ

で遙か以前に着想されそうなものだが、そうでもない。  MITのロドニー・

ブルックス教授が「ゲンギス」なる自律型ロボットを発表したのが 1988年。 

 

原型がそこにあっても、どう発展したとか、ほかの誰もが手がけたというわけで

ないところを見ると、あちらもやはり普通の人たちの国?  いや、それ以上、

プラグマティズムの本家。  何に、どう役立つか、が問われる世界ですもの。

 

その<一見ゴキブリ風>から、およそ<役立ち>無縁の「何となくペットになる

ようなもの、、」を思い立った感性こそ土井氏の本領。 93年10月、同じく

6本足の試作を部下に命じました。   <手本>があれば、日本人は速い、、

 

あり合わせの部品を用いて、僅か2週間。 ただしその担当者が特に速かったの

は、その件を逃れたい一心だったからの由。  彼また普通の人、真面目な人。

 

ところがやがて、皆このマシンで遊ぶようになり、それにつれてプロジェクトに

賛成する人が増えたのだそうで。 これならイケル! 「研究にはノメリ込みが

必要」なのだ、と土井氏。  そう、かつて私もサーモスタットにノメリ込んだ。

 

*   *

 

ただ、フツーでない人が違って来るのはその辺から。 土井氏いわく、議論の中

で「アイデアが出ると、つい<役立ち>を言ってしまうもの。 そこで、徹底的

に<何の役にも立たない>方へ導いたところ、やがて方向が見えてきた」と。

 

  稼ぎに追われ、なんてことは無かった私でも<飯の種>は大切。 <何の役

  にも立たない>ものなど、潜在意識レベルで排除していましたよ。 だから、

  そんな導き方、これまで思いも寄らなかったし、もちろんしたことも無い。

 

実業に従事する者は普通、<何かの役に立つ>ことしか考えない。 その反対は、

文字通り<逆転の発想>だが、家元糸川先生も、<何の役にも立たない>方向に

アイデアを出そう、とまで促されたことは無い。  その過激な指示の根拠を、

 

土井氏は淡々、「<役に立つ>ように作ろうとすると、パーツや工法の制約から、

出来上がるものの姿がすぐ見えて来てしまう。 それまでの期待が大きいだけに、

結局、失敗に帰することになる」とおっしゃる。  おお、これぞ洞察力!

 

「その失敗を繰り返さずに済ませるため、敢えて<役立ち>を封じ、一緒に遊ぶ

ことに専念させた。 その結果、94/4-96/4の2年間は四面楚歌。 何をバカな

ことやってるか、と皆に言われた。」  そうでしょうとも。 働く場ですから

ね、会社は。  遊んでいて良く評価されるわけがありません。  ご自身も、

 

「そういうジャンル自体が無かったのだから、そんなものを作る方がオカシイの

であって、批判する方が普通。 ろくでもない!が常識」と認めていらっしゃる。

が、認めたからと言って大勢に従うわけでもない。 分かっちゃいるけど、か?

 

「しかし、常識にとらわれていたら<独創>は生まれない。 それは<非常識>

の中から生まれるもの」という信念で、「抵抗の中で推進した」由。  敢えて

流れに竿さすリーダーシップ。  白い目なんか気にしない。  なぜなら、

 

*   *

 

「そんなこと、初めてじゃなかったから。」  常習的確信犯?!

 

「70年代、音楽CDの開発に従事した時には、音が良くない、音楽的でない、

遊んでいる、など、周囲はすべて反対だった」。

 

80年代にはエンジニア向けコンピュータの開発。 「それまでPCビジネスが

すべて失敗していたので少人数でスタートしたが、またか、の声。 ほかに無い

ようなものをやると<迫害>を受けることになるのはどこでも同じ」と。

 

故井深氏の、あの有名な設立趣意書の冒頭に謳われた「自由闊達ニシテ愉快ナル

理想工場」ソニーですから、土井氏も「他社に比べれば異色のものを出す風土」

と認めておられるが、それでも「新商品の開発に当たっている者自体は、大切に

されたことは無かった。 ソニーの人生は袋叩きの人生」と回顧なさいました。

 

1964年入社以来<突飛なことをやる奴>の定評。 <独創力で貢献する>と

言えばウツクシイが、ご本人にはイバラの道、、、 おや、どこかで似たような、、

そう、前号の主人公中村修二氏も、きわめて険しい道を歩まれたのでしたな。

 

先駆者に求められるのはその忍耐力。 本来的課題と取り組むほかに、周囲とも

戦わなくてはならない。 テキだけでなく味方とも、、、 力が2倍も要るわけ。

 

*   *   *

 

「何でも一人で」の中村氏とは対照的に、土井氏はチームを働かせる立場でした。

「人々を燃え上がらせることが必要。 それが出来なきゃリーダーじゃない、、」

そりゃ誰でもそう思う。  が、実際にはどうでしょうかね?

 

土井氏は、「各自がエンジンを持っている。 それが働いてこそ力が発揮される。

だからリーダーは、一人一人のエンジンを大切にすべき。 色々指示しすぎると、

各自のエンジンは止まってしまう。 上がエンジンを吹かすと、下は自分たちの

エンジンを切ってしまう。 世のマネジャーは、大体関与しすぎ」とおっしゃる。

 

そうなんです。 ご本人は encourage しているつもりだろうけど、される側には

この上なく discouraging なリーダーたち。 ご自分のエンジンだけがエンジン、

と信じるかのように、メンバーの自律的能力発揮を許したがらないリーダー、、、

  

「心配だし、自分の意見を反映させたい。 エゴもある。 が、言いたいことを

10とするなら、言うのは2くらいに留めるべき。 これは大変な苦痛、いっそ

口を出す方が楽。  口を出さないためには、自制心が要求されるのだ」とも。

 

そう、自制心。 意識が明確でなければ発揮できない力。 全輪駆動型チームの

リーダーは、<クレペリン>的に言う<H>でなくては務まるまい、ということ。

 

*   *   *   *

 

特に<頭脳労働者>の能力は invisible 。 発揮されてから漸くその人らしさ

が見えてくるのだが、それが<上>の期待や予測と一致しないこともあります。 

その不一致を<上>が忍ぶことは希で、たいてい<下>を従わせようとする、、

 

実力ある<下>なら逆らう。 生意気な奴だと思われ、決して可愛がられない。

逆に言えば、<上>が従順だと思い、可愛がってしまうような<下>は力不足。

あなたのチームを少数精鋭化したければ、可愛く見えないのを集めることです。

 

土井氏はその方針を貫き、<AIBO>の商品化と販売にも成功されました。

即ち、チーム・リーダーには包容力が不可欠。 即ち<H>でなくては、ね。

 

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●<AIBO>が何をもたらしたか、

 

その一つは<癒やし>だそうです。 今や人々が求めて止まない<癒やし>。

 

「これがリモコン・ロボットだったら、癒やしにはならなかった」と土井氏。

因果関係があまりにも明らかでは、アタリマエ!で感動なんか生じないわけ。

 

「自律ロボットだから必ずしも言うことを聞かない。 そこに癒やしがある。

役立ちロボットは奴隷。 奴隷では癒やしにならない」。  なーるほど!

 

<無用>のものがもたらす<用>の深遠さ、ですな。 世の中が高度化して、

そういうものが求められている、、 即ち、「無用」に「用をさせる」時代。

 

 

さすが応用自在の Rational Process も、そこまではカバーしかねるようで。

あれは<普通>や<常識>の世界のツール。 MUST、WANT は<役立ち>の

条件であって、<癒やし>なる抽象的、個別的なものは盛り込みようが無い。

 

そんな捉えがたいものを追った土井氏の風貌、F式人柄判定法では典型的な

第四象限第三傾向。 その特質は「秘めた情熱、芯の強さ、凝り性、ロマン

チスト、思考の飛躍」。  <癒やしロボット>は、たしかに飛躍だよな、、

 

<4−3>の職業適性は、研究者、技師、教師、、 「師」の付くタイプ、、

土井氏が発揮された影響力は、まさに一種の「グル」と言うべきものでした。

 

故F先生いわく、「とかく率先垂範型がもてはやされますが、真のリーダー

シップは、静かな<4−3>か<1−0>の辺にある、と思います」。

 

M的<にぎやか>時代、静かなリーダーを頂くと、部下も些か面食らいます。

まして<4−3>なら「感情の表出が少なく、心情が察しがたい」のだから。

 

*   *

 

何をするか、の選択は<察しがたい>リーダーに任せ、それが決まったあと、

普通の人々がアタリマエを積み重ねて行く。 そこではお互い共通の理解や

認識が不可欠、、 となって漸く Rational Process の出番、、でしょうな。

 

リーダーなら誰でも土井氏のように分析的に説明できるわけではありません。

その土井氏も、<上>に分からせることは出来ませんでした。  しかし、

 

<下>、即ち実行を受け持たされる側は、分かってからでなければ動けない。

が、<上>すら分からない説明なら<下>が分からなくても不思議ではない。

 

分からないままではあっても、行き違い少なく働くにはどうしたら良いか?

一つの方法は、<下>が察しをつけて分析シートに描き出し、それを示して

リーダーの確認を取ること。 リーダーは、その記述に加筆などして指示を

明らかにすること、、 ではあるまいか。 

 

Rational Process は、分かりにくいリーダーを分かりやすくするツール、、、

でもあるのです。

                          ■竹島元一■

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